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    • 2011.02.01 Tuesday
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    踏み潰す椿牡丹(雅恋・壱号×参号)

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      痛みが分かって、傷みが合わさってから余計躊躇いが無くなった気がする。この手は自分が認めている人間の中では一番小さく、姿形も頼りなく見えるから。
      護る為の覚悟なら当にしていたけれどいざ行動にしてみるとなかなか難しい。我が儘だろうと無謀だろうと、あの細い体を抱き留める役はいつだって自分で有りたいんだ。

      「壱号くんは無茶しすぎ」
      「別に…すぐ治る」
      「そういう事じゃなくて、心配してるの!」

      密仕の度に後輩は決まって頬を膨らませた。戦闘になれば大体切り込んでいくのは自分なので、当然怪我の質もそれなりだったりする。最初こそ慌てる程ではないと説明していたけれど、いつしか飽きて普段よりもかなり素っ気ない返事が増えていた。
      今回も派手な展開になったせいで肩から背中、ついでに頬と打撲やら切り傷やらを持ち帰ってしまったのだ。先が読めた僕は後輩に気付かれる前に着替えて即刻寝るつもりでいたのに、いつもの空気を読まない相棒の一言からこうなっている。

      「うるさいな、大丈夫だって言ってるだろ」
      「私が大丈夫じゃないよ…」

      しょんぼりとした様子に思わず溜め息が溢れる。全くいつもいつも人の事ばかり気にかけて、と頭で呟いた所でぴたりと動きが止まった。
      そういえばいつか、気にかけてもらえるのは想われている証拠だと誰かから聞いた。だから幸せ者なんだとか、そういう類いの。だったら僕だって同じ事。

      「…こんなの、お前が怪我するよりずっといい」
      「壱号くん…」
      「僕が怪我する度に心配してくれるの悪い気しないけどさ、僕にしてみればお前に何かあって、」

      もし、居なくなってしまったらその傷は二度と癒えない、なんて。恥ずかしくて最後までは口に出来なかった。でも、嘘じゃない。嘘じゃないよ。
      頬に触れた掌を通してそれが伝わってくれたら、と祈った。

      ――時は過ぎ、闇が蔓延る気配の真ん中に僕はいる。晴明からは「参号と一緒に行け」と言われたが、相棒に頼んで足止めをしてもらった。どろどろとしたモノが濃くなり動きを待っている。
      胸に溜めた息を吐ききってから念じると、体から炎が噴き出した。瞬く間にそれはもう呆気ない位に焼き祓われる数多の穢れ達と、主であろう相手のざわめき。そこからは動揺が見てとれて器の小ささを窺わせた。

      「小物だな」

      後輩、いや「彼女」を狙う可能性のあるモノは一つも一人も許さない。その代償に傷が必要なら幾らでも刻むといいさ。
      そうして、僕は跳んだ。

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